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20152月の深泥池水生生物研究会からのお知らせ

167回打ち合わせ会報告

連絡係 辻本 典顯

 

次回の打ち合わせ会予定

 次回の第168回打ち合わせ会を201537日(土)14:00から深泥池会館で行う予定です。通常と曜日が異なるのでご注意ください。

 

【第167回打ち合わせ会報告】

開催日時:28日(日)14:0017:00

出席者:竹門康弘、小林直正、宮本水文、木村満、斉藤孝、稲畑憲昭、加藤義和、鄭呂尚、

山田紗友美、北尾晃一、辻本典顯(順不同・敬称略)(11名)

 

 

1.2015年度活動計画(竹門

 京都市文化財保護課に提出する2014年度の天然記念物現状変更報告書の内容、ならびに文化庁に申請する2015年度の天然記念物現状変更申請書に盛り込む活動計画について話し合いました。それらの内容を2.〜7.にまとめました。なお、各活動の担当者の方は、次回打ち合わせ会までに計画書の改訂版を作成してくださいますようお願いいたします。申請書は5月に審議にかけられ、許可が下り次第活動を開始する予定です。

 

2.深泥池における水生無脊椎動物群集の構造(山田,2014年度報告)

 高次捕食者-一次消費者-生産者により構成される栄養段階では一般に、低栄養段階になるほど個体数と生物体量は多くなります。しかし、深泥池を含む高層湿原の底生動物群集では、高次捕食者と一次消費者の間で、生物体量が逆転する事例が報告されています。生物体量の逆転が起きていても、エサ不足にならず、多様な高次捕食者が生息できることの説明として、@一次消費者の繁殖の回転率が高いこと、Aギルド内捕食(餌を同じくする捕食者群集の種内・種間捕食)により維持されていることが考えられます。山田さんは、浮島湿原の水生無脊椎動物群集における構成種がいつ、何をどのくらい食べているのかを明らかにすることで、上記の仮説を検証する足掛かりにされました。調査の結果、浮島内には、ヤゴ(トンボの幼虫)やヤマトセンブリなどの捕食者が確認されました。次にそれらの捕食者の胃内容物を調べると、季節に関わらず、体サイズの大きいヤゴにおいてギルド内捕食が起きていましたが、その割合は高くはないとの結果が示されました。

 この発表に対して、深泥池の捕食者の多くは、ギルドの異なる種の動物食、植食、雑食の動物を捕食しているのであって、もしギルドが異なっても動物食や雑食の動物をより多く捕食しているなら、食物網においてギルド内捕食に似た効果が出ることが予測されるとの指摘や、この点についてさらに分析をするべきであるとの意見が出ました。

 

3.深泥池湿原に夜間出没するニホンジカの日中遊動域(鄭,2014年度報告)

 近年の深泥池では、2006年の植生調査によって浮島でのシカの食害影響が確認され、2013年の調査では、さらに厳しい採食圧が浮島の植物群集にかかっていると推察されました。また、近隣の宝が池公園でもシカの食害が問題となっています。そのため鄭さんは、@ニホンジカを含む中大型哺乳類相の生息状況を把握すること、A深泥池湿原に侵入するニホンジカの日中遊動域を推定することを目的に、赤外線センサー付き自動撮影カメラを用いたカメラとラップ調査を実施されました。宝が池から深泥池、上賀茂試験地までの区間に34台のカメラを設置した結果、6か月間で、のべ約1400回もシカが確認されました。また、宝が池では日中の記録回数が多く、深泥池では夜間に多い傾向があることが示されました。この結果から、この区域のシカの群れは、深泥池をねぐらとして宝が池域との間を昼夜移動している可能性が示唆されました。

 

4.深泥池浮島湿原植生モニタリング(鄭,2014年度報告)

 鄭さんらは、1979-80年の調査および前回の調査(2006年)と比較し、浮島内の植生の分布がどの程度変化したかを調査されました。その結果、@2006年以降、ハンモック(ビュルテ)の面積が回復しており、2014年もその面積が維持されていること、Aハリミズゴケマットの面積も回復しているが、空間分布が変化していること(水が豊富なエリアで回復?)、Bシカの食害や踏み荒らしが原因と考えられる無植生地帯(泥地)面積が拡大していることが明らかになりました。Aについては、水流によってハリミズゴケが移動分散できるだけでなく、結果的にシカの食害や踏み荒らしから免れているのではないかとの意見が出ました。3.で述べたように、深泥池周辺では多数のシカが活動しており、以前に比べると浮島での被害も深刻になっているため、個体数を抑制する対策が必要との意見が出ました。

 

5.深泥池におけるジュンサイの過剰繁茂の実態調査と適正管理法の開発(北尾,2015年度計画)

 ジュンサイ群落を適正に管理する手法を開発するために、ジュンサイを間引きした際の、ジュンサイ自体の形質の変化および植物相の変化を調査するための計画を立てました。間引き(水中の匍匐茎を切る)の程度が異なる5m四方の実験区(対照区、弱間引き区、強間引き区)を設置し、間引き前後でジュンサイの形質(花数、葉数、葉面積、重量、分枝数、ジュンサイハムシ被食度など)や植物相を比較する案が出されました。今後、間引きの程度や頻度、間引き区に他の水草が侵入した場合の管理案などについても具体的な計画を検討し、最終案を次回の打ち合わせ会でまとめることになりました。

 

6.ヒノキ林の樹木調査と伐採ならびに枯れたコナラの対策(宮本,2015年度計画)

 現在、西山のヒノキ林は成長に伴い歩道に沿って幅50 m以上にわたって樹冠が広がっており、高さ20 mをこえる木もあります。その結果、ヒノキ林前の汀帯は暗くなっており、水生植物がほとんど生えていません。さらに、競争に負けたものが立枯れしていて危険なため、宮本さんからヒノキ林の整備にとりかかるべきという提案がありました。2015年度の具体的な整備内容については、次回の打ち合わせ会で調整し次年度の現状変更申請に反映することになりました。

一方、2年前に枝払いをしたエリアで、コナラの大木が枯死しました。こちらについても倒伏の危険性があるため、2015年度から段階的に伐採するべきであるとの提案がありました。現段階では腐朽が進んでいないため、材として利用可能とのことでした。材が欲しいという方がまわりにおられましたら、声をかけていただければ幸いです。

 

7.池畔林植生調査(加藤,2015年度計画)

 これまでに進めてきた池南岸での池畔林伐採後モニタリングの一環として、2015年度も植生調査を行う計画について説明がありました。昨年に2月に防鹿柵を設置した伐採区では、下層植生が回復してきている一方で、外来植物の個体数も多いという結果になりました。このため、今後植生がどう変化するか注視する必要があります。昨年7月に防鹿柵を設置した伐採区では、設置してから時間が経過していないため現段階でははっきりしたことはわかりませんが、2015年度の調査では、伐採の効果とシカ除去の効果の両方が明らかにできるような調査計画を立てることになりました。

 

8.斉藤式ミジンコ計数板(斉藤)

 深泥池では底生動物の調査については継続して行っていますが、ミジンコなどプランクトンの調査については不定期にしか行われておらず、現状の深泥池はどの季節にどれくらいの種がどのくらいの個体数いるのかといった基本的な情報がありません。プランクトンの個体数密度を推定することは難しいですが、斉藤孝さんは、手製の採取ネットと計数板を用いて個体数密度の推定に挑戦されました。10Lポリタンクで表層水を採水した後に、手製の濾し器でプランクトンを濃縮し、独自に開発された計数板(10cm四方、幅3oにすることで表面張力によって顕微鏡下でも水がこぼれないように工夫)で計数した結果を解説いただきました。この斉藤式計数板には、コースロープに見立てた仕切り版を入れてあり、ミジンコの動きが制約され,個体数の計数が容易になっています。調査の結果、池の南岸では、春から秋に数千〜数万匹 / m3が、冬でも数百〜数千匹 / m3が確認されたとの報告がありました。

 

9.今後の予定

 37日(土): 168回打ち合わせ会(14-17時、深泥池会館)

 322日(日):宝が池シンポジウム2015(国立京都国際会館 Room B−1、無料)

           開場・受付:12時・パネル展示OPEN

           シンポジウム:13時〜16時半(終了予定)

 45日(日): 169回打ち合わせ会(14-17時、深泥池会館)

 

 

 

 

 

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