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2008年3月の深泥池水生生物研究会からのお知らせ

連絡係 安部倉 完

第95回打ち合わせ会出席者 3月9日(日)14:00-17:00

竹門 康弘、宮本 水文、田末 利治、伊藤 昭雄、橋本 有美枝、加藤 義和、鈴木 健司、松井 淳、丑丸 敦史、西村 弘子、大西 保彦、島田 美咲、伴 浩治、成田 研一、西川 知里、大畑 吉弘、嶋村 鉄也、安部倉 完

18名(順不同,敬称略)

1. はじめに

次回の打ち合わせ会は2008年4月5日(土) 14:00 から深泥池会館で行なう予定です。日曜日ではありませんのでご注意ください。

2. 深泥池の訪花昆虫についての研究紹介(鈴木健司)

神戸大学丑丸研究室で行なわれた訪花昆虫の研究成果について,院生の鈴木さんに紹介していただきました。

《要旨》(当日配布のレジメから抜粋)

被子植物‐訪花昆虫共生関係の群集構造を調べることは、花や昆虫が共進化していく多様化のメカニズムや、その多様性がどのように維持されているかを明らかにするために重要である。深泥池は全国でも有数な希少種の宝庫であり、多くの植物種が生息し、ハナダカマガリモンハナアブなどの珍しい訪花昆虫種が優占している。ここでは、これまでにも多くの研究がなされ、被子植物‐訪花昆虫の関係の研究もされている。また、池の構成は浮島の高層湿原・岸辺の低層湿原・その間の開水面・周りの二次林となっている。この浮島や周辺の二次林などの関連を訪花昆虫と被子植物の関係を通して明らかにすることは深泥池生物群集の成り立ちと現況を理解する上でも重要である。

本研究では、植物の種類によって花の構造・形・色・香り・資源量などがそれぞれ違い、訪花昆虫も身体の構造・大きさ・口吻の長さなどに違いがあることで、どのように群集構造が成立しているのかを調べるつもりである。そこで、植生分布に対応した訪花昆虫の分布の実態も明らかにするため、4〜10月の間、浮島上と池周囲に設定したルートで調査を行い、花のまとまりごとに訪花昆虫の採集、観察をした。その結果85種の植物種で141種、942個体の訪花昆虫が確認された。最も優占していたのはニホンミツバチの118個体、次にハナダカマガリモンハナアブの113個体だった。珍しい種としては、ルリモンハナバチ、アオスジコハナバチ、ルリハナアブなどが確認された。

3. 深泥池のミツガシワの遺伝的構造についての研究紹介(西川知里)

奈良教育大学松井研究室で行なわれたミツガシワの遺伝的構造に関する研究成果を,4回生の西川さんに紹介していただきました.

《要旨》(当日配布のレジメから抜粋)

深泥池の氷期遺存生物のように本来の生育地から隔離された集団は、集団の孤立化のために近親交配、遺伝的多様性の消失が進み、大きな環境の変化が生じたときなどの絶滅リスクを負うといわれている。本研究では、深泥池を代表する氷期遺存生物の一つであるミツガシワを対象にし、本来の生育地から隔離された状態で遺伝的多様性は保たれているのかを明らかにすることを目的とした。ミツガシワは、種子による有性繁殖と地下茎の伸長による栄養繁殖により成長する水生の多年草である。栄養繁殖によりクローン成長する植物の遺伝的多様性を評価するには、生理的に独立した株(以下ラメットとする)の数ではなく、遺伝的に同一である個体(以下ジェネットとする)の数を明らかにする必要がある。そこで、共優性の分子マーカーであるマイクロサテライトマーカー(特定の遺伝子配列を持つ部位の位置、数によって遺伝子のタイプを識別する方法)を開発し、ジェネットの数と大きさを明らかにした。

手法

サンプリングは浮島全体をカバーする20×20mメッシュ(以下20mメッシュとする)とC6、C7、D6、D7の杭を頂点とする方形区内をさらに2×2mメッシ(以下2mメッシュとする)に区切った格子点で行った。メッシュの交点で杭に一番近い葉を採取し、20mメッシュにおいては花柱のタイプも同時に記録した。

また、2つのメッシュ上から採取したミツガシワの葉(計183サンプル)からDNAを抽出し、今回開発した8個のマイクロサテライトマーカーを用い、すべてのサンプルを8遺伝子座について解析した。同じジェネットに由来するサンプルでは電気泳動によってPCR産物のピークパターンが一致することを利用して、8遺伝子座についてのピークパターンからジェネットの遺伝子型を解析した。

結果・考察

今回、開発したプライマー8組を使って合計42個体を識別できた。20mメッシュと2mメッシュの結果から、2つのメッシュで共通であったジェネットについて見ていくと、それぞれのジェネットは20mメッシュにおいては数十m離れている場所から検出されたが、その間にある2mメッシュからも同じジェネットが検出された。このことから、100m以上離れているサンプルが同じジェネットであった場合、その間にも同じ遺伝子型を持った細切れのジェネットが存在し、少なくとも過去のある時点においては地下茎でつながっていたと考えられる。浮島一面に広がっているミツガシワは少なくとも42個体あり、1個体は最大で80mにわたって広がるものがある一方、1サンプルで1遺伝子型のものも存在することが明らかになった。また、20mメッシュでも2mメッシュでもジェネットは入り組んで存在していることがわかった。したがって、深泥池のミツガシワは栄養繁殖だけでなく有性繁殖も行い現在も比較的高い遺伝的多様性を保っていると考えられる。

4.水質調査(島村鉄也)

  2007年11月3日に行なわれた水質一斉調査の結果について解説があった.

《概要》水道水の漏水、道路側の表流水は毎年どおり電気伝導度は高く、水質は悪化している。道路側の水質悪化は道路の凍結剤が主要な原因と思われる。全体的な傾向に大きな変化はないが、DOは2005年と比べるとやや溶存酸素は減少傾向にあり注意が必要である。凍結剤の池への流入を防ぐように要望する必要がある。

.5. 2007年度現状変更報告書と2008年度現状変更申請の内容(竹門 康弘)

3月11日に文化財保護課へ提出する2007年度現状変更報告書と2008年度現状変更申請書の内容について協議した.

そのうち泥抜きについては,昨年の文化財保護課との協議結果に基づいて,来年度に実施する具体的な対策方法についても協議した.

《概要》深泥池周辺の山林の放置や、ジュンサイ、カナダモなどの水草の繁茂によって深泥池の浮泥が池底に溜まるようになり、溶存酸素濃度の低下が進んでいます。低酸素に強いウスイロユスリカがふえるなど深泥池の底生動物相が田んぼにすむ生物相に変化しつつあります。この状況を改善するには,大正時代まで行なわれていた泥抜きを復活させる必要があります。しかも、ここ数年の生物相の変化は,これを緊急に実施しなければならない状況にあることを示しています。昨年,京都市文化財保護課との協議の結果,泥抜きの必要性と試行することについて一定の理解がえられました。そこで,来年度の現状変更の項目として試験的な泥抜きについても計画する方針で具体案を検討しました。その方法として、サイフォンの原理でパイプによりオバーフローから泥水を抜く事が出来ないかを検討する事にしました。

6. ヨシ刈り(伊藤 昭雄)

3683平方メートルを 2/15-2/21 3日間で刈り取り、3/22、23日に搬出しました。

7.カンジキ(加藤 義和)

浮島の植物へのダメージを防ぐため、ウェーダーや長靴に装着可能なカンジキを使用した結果について報告がありました.通常のウェーダーのみよりもカンジキを使用した場合の方が,ミズゴケ植生へのダメージが少なく歩きやすいことがわかりました.そこで,今年度中に3足購入して浮島へ入る人はカンジキの着用を義務付けることにしました。また、他の調査地で使用したウェーダーで浮島に入ったり、小屋の中にあるウェーダーやかんじきは深泥池専用とし他の調査地には持ち出さないことになりました。

註:カンジキ3足は4月1日時点で既に購入され,小屋の中においてあります。浮島での調査を行う方はそれを必ず装着してください。

8.外来魚駆除作業

  打ち合わせ会に合わせて4月5日(土)9:00-12:00に2008年度の外来魚駆除作業を行います。当日は刺し網の設置を行う予定です。また、4月5日以降は例年通り、毎週木、日の9:00-12:00から作業を行う予定です。ただし、4/6(日)は4/5に作業を行うため、作業はありません。

9. 次回

次回の打ち合わせ会は2008年4月5日(土) 14:00 から深泥池会館で行ないます。