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深泥池でのシカ対策について(意見書)

060401 辻野亮(総合地球環境学研究所)

深泥が池で今起こっていること〜傾向と対策に際して

深泥池の浮島湿原にシカが侵入している.浮島湿原にシカの足跡や糞が散在している上に,カキツバタやミツガシワなどが採食された痕が残っている.シカが侵入して何かしらの影響を深泥池湿原に落としているのは確実である.シカの増加を止められずに大きな影響を受けてしまった森林が日本各地にあることを考えると,深泥池湿原に昔からシカが侵入していたからといってこのまま放置するのは問題であろう.

傾向とは?〜明らかにすべきこと

シカが浮島を遊動することは,深泥池生物群集の保全上,3つの問題が考えられる.ひとつは採食圧による影響,ふたつめは踏圧による影響,最後は糞尿による富栄養化である.これら問題点を含めて深泥池湿原でシカがどのように振舞っているのかという傾向を明らかにして何らかの対策をとる必要がある.いま明らかにしておきたい問題点は,1)シカがどのくらい侵入しているか,2)彼らはどこから来るのか,3)湿原植生をどのように利用しているのか,4)湿原に対してどのような負荷(インパクト)がかかるのか(採食圧・踏圧・富栄養化),5)深泥池生物群集の今後はどうなって行くのか,以上5点が思い浮かぶ.

  1. シカがどれくらい侵入しているかは地道にシカ密度推定をするしかない.たとえば糞粒法,区画法などである.しかし深泥池湿原においてこれらを適用しようとするとそれなりに新しい方法を編み出す必要がある
  2. どこから来るかがわかればそこに生息するシカ個体群を「管理」して,深泥池方面にこないようにすることも可能かもしれない.捕獲してラジヲトラッキング法で追跡するのが定石であろう.
  3. シカが入っているだけなのか,採食しているだけなのか,どういう環境で何をしているのかによって,人間の執るべき対策も変わってくる.
  4. a) 一般的に採食圧は防鹿柵を設置して柵内外差を比較するようである.さまざまな環境(地形・植生)で柵を設置し,植物の現存量・全生産量・リター量・食われる時期の比較を行うべき.b) 攪乱された場所とその周辺やまるで攪乱されていない場所で,栄養塩の現存量・回転速度,植生変化を比較する.c) 糞・尿の栄養分析と残置量,分解にかかる時間(おそらく季節や環境によって異なる)の推定,リターバックによる分解実験などを行って,鹿糞による影響を定量する.
  5. 今後どうなっていくのかは,池の水質にも大きく拠っている.シカだけで議論できる問題ではないので,シカによる湿原植生への影響と池水質による影響をセットにして議論してゆくべきであろう.

では対策は?〜実施すべきか考えること

まずは,深泥池湿原に生育している貴重な植物を絶やさないことと(採食圧に強い)普通種によって高層湿原独特の植生が縮小することのないように気をつける必要がある.おいおいシカと湿原の現状がわかってきたら,場合に応じた対策を講じてゆく必要出てくると思われる.