侵入・進化・絶滅

伴 浩治 (府立商業高校生物科)


現在、勤務している府立商業高校(伏見区向島)には、 京都盆地一円から生徒がきている。やっぱり「深泥池」 を知るものは少なく、「幽霊スポット」というと何人かがうなずく程度である。 郊外学習に連れていくのは無理だが、旧巨椋池と合わせて 教材化したいと考えている(ブルーギル、オオクチバスの子魚計測を、 買ってでたのもその一環)。

じつは、小生も77年から始まった学術調査団に加わって、 初めて浮島に足を踏み入れるまで、その価値をほとんど知らなかった。 次の年に丹後へ移ったので、残念ながら縁が切れてしまった。 90年に舞い戻ったら、ちょうど「深泥池を守る会」結成案内の 新聞記事を見つけ、京大会館に駆けつけた。 12年たって、池の変わりようにおどろいた。 外来生物でさえ、アメリカザリガニ・カムルチーから、ブルーギル・オオクチバス へ政権移動が起こっていた。

数年前に、守る会の幹事になって、「深泥池ニュース」の編集を担当している。 深泥池水生動物研究会にも、すぐ飛びついた。 子どもの頃から、魚つかみは好きだ。 が、ふと気がついたら、立派なおじさん。平日普通に勤務して(+子育て)、 毎日曜日に片道1時間かけてかようのはちょっとしんどい。 つぼ網揚げには最初の数回参加しただけで、あえなくダウン。 それではということで、1年前から計画していた 「深泥池を守る会・半公式ホームページ」を、47回目の誕生日に開設し、 水生研の簡単な紹介ものせた。

(トップページのURLは http://www2.justnet.ne.jp/~kban/)

といっても、これを継続していくのは大変。さいわいにも、高井利憲さんが、 「深泥池水生動物研究会」のHPを開設してくれたので、お互いにリンクをはって、 補っていけることになった。この研究会の特徴は、 いろんな人が、いろんな思いで、いろんな特技を生かして、いろんな参加のしかた をしていることである。研究者の集団とちがって、あっちウロウロ、 こっちウロウロしてしまうが、素人の目の方が鋭いこともある。 とくに地元の人たちや、とくに若い人たちの存在の意味は大きい。

さて、学生時代から、帰化生物のことが気になっているのだが、 八方美人的性格が災いして、深くつっこんだことがない。 いい加減なことになるが、あえて発言してみたい。

1昨年末に、高校の地学教員の研修に紛れ込んで、ハワイイ(Hawaii)島 に行った。ダーウィン、マッカーサー&ウィルソンなど、著名な生物学者 が研究した「島の生物学」の一部を予習していったのだが、 なるほどと納得できることがたくさんあった。 ハワイイ諸島は、太平洋の海底から噴出したマグマによってできたのだから、 現在、ここにいる生物は、すべて帰化生物(広い意味で)である。 遥か彼方のアジア・アメリカ・オセアニアから、何らかの手段でたまたま たどり着いた生物が住みつき、種分化していった。 たとえば、深泥池にもあるサワギキョウの仲間が、ハワイイ諸島では 木本になったものまで含めて、何種類にも分化している。 その後、渡ってきた最初の人類ポリネシア人によって持ち込まれた 生物(ココヤシ、ブタなど)、1800年代からキャプテンクックを先頭にしてどっと 押し寄せた欧米人、さらに日本も含めたアジアからの移民が、 大量の生物を持ち込んだ。 オアフ島のホノルル空港に降り立つと、さまざまな「野鳥」や トロピカルプランツが出迎えてくれる。 一般の人なら「豊かな自然」と誤解しそうだが、 ほとんどすべてが帰化生物である。 小生もだまされた。ハワイイ島のホテルの庭にも、「野鳥」 がいる。スズメは別として、野鳥だと思ってカメラを向け、 現地で買った図鑑を見たら、「mina=ムクドリの仲間、南アジア原産」 とある。同行した先生が、「そういえば、ネパールあたりでも 見たことがある」。ハワイイ島の自然観察パンフに、 「mina と死と税金ほど、確実なものはない」ということわざがあった。 直接見ることができなかったが、メジロ(日本の)もいるそうだ。 教科書には「外来生物は、豊かな自然が残された場所には侵入できない」 と書いてあるが、マウナロア火山の中腹の自然林で見たのは、 アメリカやアジアから持ち込まれた「game bird」。 キラウエア火山横のボルケーノハウス泊、出迎えてくれたのは 「ohia lefa」(フトモモ科、初期の侵入種)の茂みにいた前進真っ赤な鳥、 北米の「cardinal」(大リーグ・カージナルズの)。 一方で、初期にやってきた鳥の多くが、減少・絶滅しており、 鳥の専門家がその気になって探さない限り、彼らを見ることはほとんど できないようだ。

・・・・など見ていると、どこまでがnativeで、どこからがexotic(foreigner) というべきなのか、わからなくなってしまう。深泥池にしても、 現在いる生物のうち、いちばん古いのは、ミズゴケ・ミツガシワなどの 氷期の遺存種であろう。 一万年ほど前から始まった地球の温暖化とともに南からやってきた生物が その次、縄文人・弥生人が農耕文化とともに持ち込んだ生物、明治以降 外国から持ち込まれた大量の生物と続く。

竹門さんもいうとおり、いったいどこまでを「外来種、帰化種」 とみなすのか?どの生物を駆逐すべきなのか? 残念ながら、侵入した生物を完全に駆逐することはほとんど不可能だし、 生態系に悪影響を与えないようにしようとすると、さらに不可能に違いない。 コカナダモのように、勝手に(?)消えてなくなった幸運な事例もあるが。

とりあえずは、新しいもの、特に大きなダメージを与えているもの、 比較的駆逐しやすいものから順番に、やっつけていくしかないのであろうか? 常に、第3者によるアセスメントでチェックを受けつつ。 何年かかるか。先がなかなか見えない。


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