このページの作成者:辻野亮・総合地球環境学研究所
写真撮影:辻野亮

深泥池湿原植生とシカの関係 (2006年11月14日作成.辻野)


深泥池湿原にシカが侵入しているらしい.たとえば,

状況証拠
カキツバタに採食痕がある.


チゴザサにも採食痕がある.


ミツガシワにも!


これはもしやシカの足跡ではないか.


シカの糞発見!


さらに,赤外線センサーで動物の動きを感知して自動的に撮影するカメラでを湿原に向けてみると,

メスジカの姿が深泥池湿原で撮影された(2005年7月28日 4時46分).


立派なオトナオスの姿も撮影された.


メスジカが湿原植物を採食しているように見える(左奥にもう1頭メスジカが隠れている).


以上から,これまで見られてきた採食痕や足跡,糞はシカのものであろうと考えられる.
撮影された時間帯を考えると,
シカは日中を嫌って夜間を中心に湿原に侵入し,湿原植物を食べているのであろう.


シカの影響〜採食圧・泥炭撹乱・富栄養化

1) 植物を食べる ⇒ 特異な湿原植生を変えたり,貴重な植物を絶滅させるかもしれない

クロホシクサ(絶滅危惧IB類,EN)のすぐ近くでミツガシワが採食されている(2006年10月26日)!
同属のケイヌノヒゲやシロイヌノヒゲに採食痕が見つかっているのでクロホシクサも採食されているかもしれない.


以前はチゴザサが優占していた群落で,
植生がなくなるほどに採食されて泥炭土壌表面が見えている(2006年9月4日).


逆に外来植物・アメリカセンダングサが繁茂している場所もある(2006年8月19日.ただしシカとの関係はまだ不明).
まばらにヨシが生え,チゴザサを覆うようにアメリカセンダングサが優占している.


2) 歩き回る ⇒ 泥炭と植物の生育環境を攪乱する

シカはよく同じところを歩き「シカ道」をつくる(2006年11月3日).
湿原の凸地形(ハンモック)のオオミズゴケを撹乱してどろどろの道を作る.
足跡が多数残っている.


シカが湿原にはまる.もがきながら湿原を歩いた足跡が残っていた(2006年8月19日).
湿原表面に定着していた植物に打撃,これから定着する植物にも打撃!


さらに,食べるためにうろちょろして地面を足跡だらけにする(2006年8月19日).


3) 糞や尿 ⇒ 貧栄養で特異な湿原の環境を富栄養化させるかもしれない

湿原では多数の糞塊が見られており,湿原上の富栄養化に一役買っているのではなかろうか.



トランセクト調査による採食品目調査

深泥池湿原において,どこでどのような植物種がシカによる採食圧を受けているのかを明らかにするために,
湿原に幅1メートルのトランセクト調査区(航空写真の白線部分)を作って,
出現植物種とシカ採食痕の有無を記録した(2006年10月5日,6日).


その結果,草本の中では特にミツガシワとカキツバタ,チゴザサ,ヨシへの採食圧が大きく,
全部でおよそ10種くらいに採食痕が見出された.

ところでシカは陸とつながっている東側から湿原へ侵入していると考えらる.
しかし,採食痕の残った植物は東側のみならず島の全域で見られた

さらに,シカ道やヌタ場が島の全域にちらほらと見られた.
採食された植物は翌年にはある程度回復するけれども撹乱された泥炭層はそうやすやすとは回復しないであろうから,
シカの採食圧よりも泥炭撹乱のほうが重要な問題かもしれない.


深泥池湿原植生の保全策

シカ対策手法は物理的に対象を囲い込む方法が中心である.
柵を設置して希少植物や植生をシカの採食から保護するのは有効な手段であろう.
ところで,湿原植生はシカによって改変されるだけでなく周囲からの流入水の影響も多分に受けている.
したがって,深泥池湿原植生を保全するためには植物群落分布と池の水質,シカの影響を追跡調査しながら植生保護柵を設置することが急務である.



おまけ

タヌキの糞と足跡と思われるものがあった.


と思ったら,自動撮影装置でタヌキも撮影された.

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